なんだか君には似合わない

「みやこの……プリンス?」
「鳴ちゃん凄いわね、ニュースにも新聞にも載って」
母はどこか呑気そうに言った。

鳴は騒がれたり注目されるのが大好きな人間だ。
でも、マスコミがつけた? と思われるこのあだ名はどうなんだろう。鳴がプリンスと呼ばれているなんて、なんというか、違和感が凄い。
プリンスとは違うんじゃないかと思ったが、脳内で鳴が「失礼な!!」と怒ったような気がした。

鳴が載っている新聞は思わず買ってしまっているものの、名前の前や横には必ずと言っていいほど「プリンス」の表記。
スポーツニュースを見てもプリンスなんて紹介されている。この間なんてテレビで「鳴ちゃんフィーバー」なんて言われていて、飲んでいたお茶を吹き出して怒られてしまったくらいだ。
なんだか違和感が拭えないけれど、きっと本人は注目されて喜んでいることだろう。


お隣の成宮家の前にはマスコミが集まっている。大きなテレビカメラやレポーターの人が居て騒がしい。
「お隣のお姉ちゃん、いい迷惑だって言ってたわよ」
やはり母はどこか呑気だった。


その日も成宮家の前には幾人かのマスコミ関係者が居た。
ふとアイスが食べたくなってコンビニへ行った帰り道。家の門を開く前に声をかけられた。
「ねぇねぇ! あなたって成宮鳴くんの幼なじみって本当?」
レポーターだかアナウンサーだか知らないが、綺麗なお姉さんに声をかけられて、思わず反応してしまった。失敗した。
「ご近所の方に聞いたんだけど、ちゃんっていう幼なじみといつも一緒だったって。あなたがそのちゃん?」
なんて返事をすればいいのか。いっそ無視して家に入ろうか。でも無視なんてしたら、何か変なことを言われるんじゃないか。アイスが溶けてしまう。頭の中がぐるぐるする。

「幼稚園の時から一緒なんでしょう? もしかして彼女なのかしら? 鳴くんって普段どういう感じ?」

何も答えていないのに何故か話しが進んでいる。ますます返答に困った。

「失礼、娘が何か?」
一体どうするのが正解なんだろう、そう思った時に後ろから声をかけられた。振り返ってみれば父がいた。

父に促されて家に入る。玄関で待っていると、間を置かずに父も家に入ってきた。
「お父さん」
、ああいった人たちは相手にしないように」
「うん……ありがとう」
父は一つ頷いてリビングに行った。
思い出してアイスを確認したところ、やっぱり溶けて柔らかくなっていた。直ぐに食べたかったのに。泣く泣く冷凍庫へとしまった。


後日、鳴に話したところ「にマスコミって似合わない!!」と言われた。
声には出さなかったけど、やっぱり私は鳴にプリンスなんてあだ名も似合わないと思う。