励みにするなんて言えない

3月の下旬。無事に進路が決まり、制服が出来上がった。サイズの確認のために真新しいそれに腕を通す。 憧れの赤い指定リボンがたまらなく嬉しい。家の前でお母さんに写真を撮ってもらったあと、隣の成宮家のチャイムを鳴らした。

「鳴! 制服出来た!」
「見ればわかるよ!」
「鳴も新しい制服着て! 一緒に写真撮ろ!」
腰が重そうな鳴を無理矢理立たせて窓際に掛けてある制服を渡す。
「ネクタイもしめてね!」

言い残して鳴の部屋を出る。舌打ちが聞こえたような気がしたけど気のせいだと思うことにした。
成宮家のリビングでおばさんやお姉ちゃん達に制服姿を褒めてもらっているときに、ネクタイをしめながら鳴が降りてきた。

身長が伸びることを考慮して大きめに作った制服は今の鳴にはダボついて見える。1年も立てばぴったりになるのだろうか?

そのまま外に引っ張り出して、うちのデジカメで1枚、成宮家のデジカメで1枚、最後に私の携帯で1枚撮って、撮影会は終わった。

あとで制服のツーショットを待ち受け画像に設定するんだ。

、さっき携帯で撮ってたやつちょうだい」
「わかったー」
早速鳴のアドレス宛に写真を添付したメールを送る。
「鳴も待ち受けにするの?」
「(待ち受けにするのか)待ち受けにはしないけど」
「しないけど?」
「……別にに言わなくてもよくない?」
「そうだけど。でも気になるよ」
「内緒!」

あっかんべーとしながら、鳴は家に入っていった。お母さんとおばさんの話し声を遠くに聴きながら、鳴とのツーショットを携帯の待ち受けに設定する。
入学式まであと少し。
携帯を開けばいつも通りの鳴と私が並んで写っている。この写真を眺めながら、新しい生活を頑張ろうと思った。