同じクラスの成宮くん
同じクラスの成宮くんは、野球部のエースで凄い人らしい。クラスの女の子達の噂話が耳に入る。
「甲子園行ったってことは将来プロ野球選手になるのかな?」
「え、プロ野球選手と同じクラスとかヤバくない?」
「今のうちにいっといた方がいいのかな?」
なんて会話が耳に入る。プロ野球選手になりそうだからいくというのは、どうなんだろう。
次の授業の教科書とノートを準備して、ノートをペラペラとめくる。宿題は無事に終わっている。
「やべー次数学!? 誰か宿題写さして!」
教室に噂の成宮くんの声が響く。さっきまで成宮くんのことを話していた女の子の一人が笑顔でノートを差し出していた。
翌日。
英語の先生は予習……単語の意味調べを事前にやっておけと非常に厳しい。そして、その日も成宮くんは焦った様子だった。
「やべー、今日英語当たる! 誰か助けて!」
例の成宮くんの話をしていた女子たちはトイレにでも行っているのかいなかった。そして英語を写させてくれる人を探してキョロキョロしていた成宮くんと、目があってしまった。どうしよう、と思う間もなく成宮くんは私に近づいてきた。
「英語予習してある?」
「してあるけど……」
「写させて!」
単語帳を渡した私に、成宮くんは笑顔で「ありがと!」と言った。
更に翌日。
数学の先生はよく宿題を出す。お弁当を食べ終えた昼休み、友達と数学の宿題の答え合わせをしていると、またも成宮くんに声をかけられた。
「数学の宿題、解けなかったのあるんだけど見せてくれない?」
「写させて」ではないということは、自力でチャレンジしたということか。私と友達と、成宮くんの3人でノートを付き合わせて、成宮くんに解き方を説明した。よく成宮くんの噂話をしている女の子達からの視線が痛かった。
英語と数学の手助けをしたからか、成宮くんは予習や宿題で困ったことがあると私に話しかけてくるようになった。
「隣のクラスの子が成宮くんに告白したけどフラれたらしいよ」
「えー、そうなの?」
「成宮くん他校に彼女いるって聞いたけど」
「そうなの!?」
「その彼女とは長く続いてるって聞いた」
「野球部って寮でしょ? ただでさえ忙しいのに、他校なんて会う時間無くない?」
「別れるの時間の問題じゃない?」
成宮くんは他校に彼女がいるらしい。だからどうってことはないけれど。
その日は成宮くんが英語で当たる日だけど、私に声をかけてくることはなかった。
「成宮お前今日当たる日だけど、静かだな」なんて話しかけている男子の声が耳に入り、自然と視線がそちらに向く。
「今日は準備してあるからね!」
「珍しいな。槍でも降るんじゃね?」
「失礼だな!」
「成宮が自分から予習するなんて相当だろ。いつも写させてもらってるし」
「まぁ先輩に監視されてたからやったんだけど!」
「やっぱり自主的にやった訳じゃないんだな」
「今日は大丈夫!」と鼻を高くしている成宮くんと目があった。
「今日は自分で予習してあるから!」
「そ、そっか。それはよかった」
咄嗟にその二言だけ言うと、成宮くんは少しビックリしたような顔をした。
「それが普通だよ、とか言わないんだね」
「え?」
小さな声でポツリと零した言葉。成宮くんは少し視線を伏せて、更に小さな声で「違うよな、当たり前か」と言った。
一体、何が違うんだろう。私の反応が彼の求めているものでは無かったのだろうか。もっと盛大に驚いたりした方がよかったのかな。それか「凄い!」と褒めるとか。
なんて言おうか悩む私に、成宮くんは「何でもない!」と言って男子との会話に戻っていった。