理由なんていらない
「彼氏と別れた!」
「次いこ次!」
懐かしい顔の旧友との宴席は、悲しい報告で幕を開けた。
別れたばかりだという友人の話をじっくりと聞いて、お酒と料理を味わい……コース料理のメインが運ばれてきたところで、会話が途切れて──二人の視線が私に集まった。
「ちゃんたちは順調?」
「う、うーん……。……ありがたいことに、つつがなく?」
「平穏で何よりです」
「ありがとう」
「なんでお礼?」
「二人が安泰で嬉しいから」
「私たちちゃん達が別れちゃったら自分のことのように引きずると思う」
「そうなの……? たぶん別れたりはしないと思うけど……」
「今年凄い活躍だよね。まだ負けなしだって」
「うん。調子いいみたい」
「連絡って取れてるの?」
「今年はあんまり。やっぱり忙しいみたい」
「ちゃんでもそうなんだ」
「でも便りがないのは元気で……怪我がない証だから」
「はーーー」
「構え方が違うよね」
「嫌じゃないの? 連絡取れなかったり、会えなかったり」
「うーん、試合で活躍したときは話したくなったりするけど」
「電話とか……出来ないよね……」
「うん。だからLINEのメッセージ連投してる」
「なんて返事くるの?」
「大体『ありがとう』のスタンプかな」
「本当に忙しいんだね……」
「すっかりテレビの中の人、って感じで同じ中学だったとか信じられない……」
「あんまり昔から変わってないよ?」
「私たちのこと覚えてる?」
「覚えてるよ! 今日のことも話してあるよ」
「ちゃんの友達じゃなかったら覚えられてなさそう」
「えー、でも一年と二年でクラス一緒だったでしょ?」
「そうだった」
「同窓会とかあったら凄いことになりそうだね」
「鳴は予定が合わないんじゃないかなぁ」
「ちゃん絶対囲まれるよ」
「私?」
「囲まれるよー! だってなる……えっと、二人いつも一緒だったし」
「『まだ付き合ってるの?』って色んな人に聞かれると思うよ」
「あー…………。……それは困るなあ……」
「まぁ同窓会があるかわからないけどね」
「会いたい人には大きい飲み会とかじゃなくて、こうして声かけて小さく集まった方がいいかも」
「そうだね……。でも二人以外にそこまで会いたい人いないなぁ」
「また飲もうね!」
「みんな結婚したら六人で集まったりしても楽しそう」
「楽しそう~! でもスケジュールが確実なのって年末年始しかないなぁ」
「じゃあ忘年会か新年会だね」
「その前にまずは彼氏作らないと~」
「出会いが欲しい! 合コンしよう!」
「あんまり焦らない方がいいと思うよ」
「そうだよね~。焦ると大体ロクなことにならない」
「……ねぇ、ちゃんたちは別れ話とか出たことないの?」
「ないなぁ。別れる理由がない」
「……すごい」
「結婚が決まったら連絡してね……!」
「まだ当分先だよー! 就職したばっかりだし」
「職場どう?」
「プロ野球好きな上司とよく話すんだけど、たまに会話に困るかなぁ」
「あぁ……」
「そういえばプロ野球って見に行ったことないかも」
「今度行こうよ! 最近女性ファンがすごく増えたから、色々女性向きのものも増えてるの。グッズもフードも」
「カープ女子話題だったもんね」
「せっかくなら……投げるところ見たいけど、わからないんだよね?」
「うーん、怪我人が出なければ、たぶんここら辺かなぁ、って予想は出来るんだけど、確約は出来ないね」
「そっかぁ、でも一回みんなで行ってみようか」
「やったー! 待って、今サイト開くから」
「ユニフォームとか買っちゃおうかな~」
「写真撮って送ろ!」
「もちろん!」