歓迎会

三人だけの入学式を終えて、再び教室に戻ってくる。私たちは三人とも呪術師の家の出身ではないので、呪術会の基本事項のオリエンテーションがあった。任務の割り振りなんかを決めている呪術総監部。そしてエリートとされる御三家。五条家、禅院家、加茂家。……代々政治家の家みたいなものかな。夜蛾先生によると一つ上の学年、二年生に五条家のトップの人がいるらしい。髪が白いからすぐにわかるって言うけれど。……若白髪なのかな。

高専は寮が併設されていて、私たち一年三人も入寮することになっている。食事は朝食だけ寮母さんがいて準備してくれるらしく、昼と夜の食事、洗濯と部屋の掃除を自分で行うことになる。男子寮と女子寮の共用部分に談話室があって、そこにキッチンと冷蔵庫が設置されていて自分で何かを作ることも可能だ。
寮の談話室に戻ってきたところで、白髪の男の人と女の人が一人、ソファに座っていた。
「お、一年戻ってきたな」
もしかしなくても、この人が五条家の人。
「五条悟。二年」
「家入硝子。二年」

…………無表情で簡素な自己紹介をされた。

「灰原雄です!」
です」
「七海健人です」

ドキドキしながらこちらも名前を名乗ったが、五条さんは「あっそ」と言っただけで大きなテレビの前に異動した。今まで接してきた誰よりも背が高い。同じ生き物なのかと聞きたくなるくらい足も長かった。

「スマブラやるぞ」
「分かりました!」
テレビ台の中から64が姿を現した。

「硝子やる?」
「やんない」

「灰原どのキャラ使うの?」
「リンク! は?」
「マリオ」
「女子ってカービィじゃないの?」
「マリオってスタンダードで誰でも操作しやすいから」
「なるほど、七海は?」
「…………どうしてもやらないと駄目なんですか?」
「当たり前だろ。一年は参加しろ。先輩命令」
「やな先輩~」

家入さんはそう言ってキッチンの方に歩いていき、煙草を吸い始めた。……換気扇の下に移動したのか。
そうしてスマブラ大会が始まったけれど、私のマリオはあっという間に灰原のリンクに吹っ飛ばされてしまった。上手そうだと思ってたけど予想以上だった。
「うわ、お前弱すぎ」
「弱すぎてウケるわ」と五条さんに笑われた。七海も五条さんの手で瞬殺されて、私たちはそのまま灰原の応援にまわった。ちらりと見た灰原と五条さんの手は、私には理解できない動きをしていた。

灰原と五条さんの戦いを見守っていると、肩を叩かれた。振り向いてみれば煙草を吸い終わったであろう家入さんに「ちょっとお話しようよ」と声をかけられて、テレビの前からキッチンテーブルに移動する。まるで怖い先輩に体育館裏に呼び出されるような台詞で少し身構えてしまう。七海の視線が一瞬だけこっちに向いた。……きっと心配してくれたんだと思う。…………そうだよね?

キッチンテーブルにことりと置かれたお茶の入ったコップを置いて、居住まいを正してお礼を言う。
「そんなに緊張しなくていいよ」
「あ、その…………はい」
それから家入さん……硝子さんと他愛のない雑談をした。
「二年生は硝子さんと五条さんの二人なんですか?」
「もう一人いるよ。今任務行ってて……」
硝子さんがポケットから携帯を取り出す。
「もうすぐ帰ってくる。五条、夏油が何か買って帰るものあるかって」
「何か食べるもん適当に」
完全に会話が親と子のそれ。

スマブラの対戦を何回も繰り返している間に、また漫画でしか見たことの無い太ももの部分がゆったりとしたズボンを履いた、五条さんに負けないくらい背の高い人が談話室に入ってきた。
…………どうして制服なのに一人一人形が違うんだろう。……でも私と硝子さんの制服は一緒だな。男子は何種類か選べるのかな。
「ただいま」
「おかえり~」
両手で抱えていた荷物を受け取ろうとしたら、七海と肩がぶつかった。……同じことを考えていたのか、私と七海で片方ずつ袋を受け取った。

「今日入学した一年生?」
「はい、です」
「七海健人です」
「今五条さんとゲームしてるのが灰原です」
「よろしくお願いします!」
「私は夏油傑。悟、程々で解放してやれよ」
「こいつつえーよ。傑も次入れよ」
「全く……。お菓子買ってきたから、適当につまんでいいよ」
「ありがとうございます」

対戦中の二人もつまめるようにテレビの前のローテーブルにお菓子を広げていく。
その後もスマブラをしながら色々話をしてみて、夏油さんがとてもしっかりした常識人ということがわかって……私はひっそりと、何かあったら夏油さんに相談しようと心に決めた。
………………多分、七海も同じことを考えていたと思う。