男の子の食事
結局、ゲーム大会は深夜まで続き、私たちが解放されたのは十二時を過ぎたところだった。灰原は殆どずっと五条さんとゲームをしていて、夏油さんは参加したり離脱したり、七海は殆どゲームをせずに過ごして(部屋から出ていくのは五条さんが許可しなかった)、私は硝子さんや夏油さん……それから少しだけ七海と話した。
硝子さんは反転術式という他人への治療が行える数少ない人で、任務に出て負傷した術師の大半が硝子さんの元に運ばれてくるらしい。
任務……任務か。高専に入学する前に話を聞いているから驚きはしないが、少し体が緊張して固くなってしまう。七海は夏油さんにしきりに任務について話を聞いていて、私もずっとそれを聞いていた。硝子さんは任務で外に出ることはほぼ無いらしい。……確かに、ゲームとかでも回復役のキャラは大体奥に居て動かないことが多い気がする。術師と呪霊は強さで階級が付けられていて、私たちは皆四級。呪霊と戦うということには身構えてしまうけれど、その分お給料が出るというからそれは楽しみだ。五条さんと夏油さんは一級術師だという。夜蛾先生も一級術師だった。目の前にいる人たちが凄いのだろうとは思うけれど、それがどれだけ凄いのかはよくわからなくて……色々なことが曖昧だった。
人数が少ないからか二年生の結束──と言ったら三人共に凄く嫌な顔をされた──というか、仲の良さが凄い。私たちも一年経てばこういう風に親しくなれるのだろうか。……七海はずっと敬語の気がする……。
そんなことを思いながら、呪術高専での一日目は終わった。
***
朝七時に目覚ましが鳴って、あくびを噛み殺しながら起き上がる。顔を洗って制服に着替えて、身だしなみを整えてから食堂に降りる。朝ごはんだけ
寮母さんが準備してくれるのがありがたい。自分で支度するんだったらパンだけ食べて終わりとかになりそうだ。いや、戦うってことは身体が資本だからしっかりした方がいいのかも……。夏油さんに聞いてみよう。
食堂には七海と灰原がいて、二人はもう食事中だった。
「おはよう!」
「おはよう。時間決めてたの? 私にも言ってよ」
「……おはようございます。偶然一緒になっただけです」
まぁ、そんな予感はしていたけれど。朝食の盛られたプレートを受け取って、二人と同じテーブルにつこうとして、ふと止まる。……灰原と七海、どっちの隣に座ろうか悩んで、私は灰原の隣に座った。
七海はご飯の量があまり多くない。対して灰原は……これでもかというくらいに大盛だった。
「いただきます。……灰原、凄い量だね」
「まだ一杯目だよ!」
「…………お代わりするんですね」
「七海もこれくらい食べるだろう?」
「そんなには食べられません」
灰原は大きな口で黙々と食べ進めていき、あっという間にお茶碗のご飯を食べ終えてお代わりをしに行った。あんなに盛ってあったのに食べるのが速い。驚きが消化出来ていないのに、灰原はまたこれでもかとご飯を盛ったお茶碗を手に戻ってきた。
「おかず足りる?」
「ご飯だけでも美味しいよ!」
はきはきとしたよく通る声。私の驚きをよそに灰原は三杯の山盛りご飯を食べて、しかも誰よりも早く食事を終えた。……私と七海は灰原の食事に圧倒されていた。
「…………男の子ってすごい」
とポツリと呟けば、聞き逃さなかった七海が「一緒にしないでください」と直ぐに言葉を返すのだった。