花盛りの地獄
「高専ってさ、花多いよね?」
お昼ご飯を食べ終わった後、だらだらと過ごすお昼休みの時間が大好きだ。
窓からふと菖蒲の花が見えたので口から出た言葉だった。
「そう言われてみれば確かに?」
牛乳の一リットルパックを飲みながら灰原が返事を返してくれる。彼はもう少し身長が欲しいらしくて、隙あらば牛乳を飲んでいる。骨太そう。
「桜が植えてあって、花壇にもチューリップとか春の花あったし」
高専の中で見たことのある花を思い出して口にして行く。……自分から話題にしたけれど、あまり花自体に注目して過ごしていないということが分かった。……もう少し気にするようにしよう。
「池に蓮もあったし」
「あった?」
全く記憶にないところが灰原らしい。ところで、ずっと本を読みながら無言の七海。こちらを気にしているのはわかっているからそろそろ一言くらい話して欲しい。
「蓮があるってことは蓮根が取れるってこと?」
「……取れるとして、食べたい?」
「試してみたくはあるね」
「私は嫌だなぁ」
やっぱり食べるなら農家さんのものがいい。だって、自然のものって、人の口に入るとか考慮されていないし。……虫とか気になる。灰原は男の子だから虫も平気そうだなぁ。でも授業で使った蝿頭は特に気にならなかったことを思い出す。……どんな呪霊も相手にしなければならないけど、虫みたいな見た目の呪霊って居るのだろうか。居たらやだなぁ。
「校庭の脇につつじもあったし」
「渡り廊下のところに梅の木もあります」
ようやく七海が会話に入ってきてくれて、私は凄く嬉しい。
「体育館のところに藤もあったよね」
珍しく灰原から花の名前が出てきた。
「学校に藤の花って普通ある?」
絶対無いと思う。
「まだ絶対気づいてない花あるよね」
「先輩たちの誰かがお花好きなのかな?」
「それは無いでしょう」
「七海言い切るね……。……私もそう思うけど」
「分からないよ! 夏油さんがお花好きかも!」
そこで名前が挙がるのが夏油さんなところが高専だ。でも五条さんっていいところの人だから、もしかしたら生け花とか出来るのかもしれない。今度聞いてみよう。
そういえば、いつもやいやい言いながら教室に来る先輩達は今日は来ていない。任務なのだろうか。
「…………先輩たちいないと静かだね」
「…………本が読めて助かります」
入学してようやく一ヶ月経とうかという時なのに、もう先輩の扱いがぞんざいだ。けど、止めようとは思わなかった。
Title : さよならの惑星